決戦はVALENTINE

                                                                     (side 英二)





シマッタ!!やっちゃったよ〜〜〜


朝一番に部室に行って、大石にバレンタインのチョコを渡そうと思ったのに、 昨日遅くまで作っていて、寝過ごしちった。

今から行っても、練習には間に合わないだろな〜

チクショ〜!! 大石もう他の奴からチョコ受け取ってんじゃないだろうな?


朝起きて時計を見てビックリした俺は、身支度だけはしっかり整えて、練習は既に終わってる時間だったけど、

それでも大石の顔が見たくて、猛ダッシュで部室に走りこんだ。

そこで俺が目にしたものは、部室を取り囲むようにたくさん集まっている女の子達だった。



「うわっ?何?」



思わず声が出て、シマッタって思った時には、女の子達に囲まれていた。



「菊丸先輩!!コレ受け取って下さい」

「えぇ?イヤ今年は俺・・・」



って言い終わらないうちに予鈴がなって、それを聞いた女の子達は、気持ちが急かされたのか強引に俺の腕の中へチョコを置いていく。



「菊丸先輩!!受け取ってくれてありがとうございます!!」



礼儀正しくお礼を言って、キャーキャー言いながら教室へ戻っていく女の子達。


イヤ・・・だから・・・今年は受け取らないって言おうとしたのに・・・


俺の気持ちとは裏腹に、腕の中にはチョコの山が出来ていた。















チョコを受け取った後我に返って『一時間目に遅刻する〜』って今度は猛ダッシュで教室まで行ったのに・・・

一時間目は自習・・・『なんだぁ・・・』って脱力した後、早速不二の席の前の奴と代わってもらって、今朝の話を不二にしていた。



「それでさぁ〜練習には間に合わないは、女の子達に囲まれるは、チョコは無理矢理腕の中に置いて行かれるは・・・で散々だったよ」



不二は声を凝らしながら笑っている。



「なんだよ笑うなよ!」

「イヤ〜 その時の英二を見たかったな」

「見なくていいつーの!それより不二こそ凄いじゃん!何だよその紙袋のチョコの量は!」



俺は机の横に掛けられてる、紙袋を指差した。



「あぁ。コレね。今年は1年生の子達が朝からたくさんくれたからね。英二と同じだよ」

「なんだよ。じゃあ人の事は笑えないじゃんか」

「まぁ。そうだね」



う〜何か不二って余裕あんだよな。

同じ様な状況になってた筈なのに何で俺は笑われるんだ?

チェッ・・・まぁいいや・・・

それより不二に聞きたい本題を切り出さなくては・・・



「ところでさぁ・・・大石はどうだった?」

「大石?」

「そう。大石はその・・・チョコ貰ってたのかな?」



不二は机に肩肘を突いて、片目だけ開けてウインクするように、俺を見る。



「ホントは最初からそれが聞きたかったんでしょ?」



ウッ・・・・やっぱりばれてた?

これだから不二は侮れないんだよなぁ・・・

取り敢えず笑って誤魔化して、再度聞いてみる。



「ニャハハハハ・・・でどうなんだよ」

「う〜ん。こういうのは本人に直接聞いた方がいいとは思うけど、英二の想像通りじゃないかな」

「あっ・・・やっぱり」



まぁ聞く前からわかってた事だけどな。

多分・・・イヤ絶対・・・大石の性格上、チョコを差し出されて、断れるわけ無いって。

俺でさえあの女の子達の勢いに押されるんだから、大石は押される所の話じゃないだろう事は 俺にだってわかってるんだけど・・・

だけどさぁ・・・ちょっとだけ・・・

俺って恋人がいんだから、断ってもいいんじゃないかって思うんだけど

これって只の我がままなのかな?

イヤ・・・我がままじゃないよな。声を大にして言っても良い筈だ!!

だって大石は俺の大石じゃんか!

そこんとこはちゃんとしてもらわないと!!



「英二」

「何っ?」

「顔がどんどん怖くなってるよ」



不二にそう言われても、何だかこうモヤモヤしていたのが、一気にムカムカに変わりだしてきて、気持ちが抑えらんない。



「仕方ないじゃん。大石が悪い」



言い切った俺を見て、不二は呆れたように小さくため息をついて、俺を見る。



「今日は大目に見てあげたら?お互い様じゃない」

「嫌だね。俺は良くても、大石は駄目」

「横暴だなぁ・・・」

「それでも・・・嫌なものは嫌なの」



さらに言い切った俺を見て、不二はクスクス笑い出した。



「英二はホント正直だね」

「不二は正直じゃないのかよ?」



俺の言葉に珍しく不二の顔色が少し変わった。

そして窓の外に目線を移し、遠くを見つめながら答える。



「僕は・・・そうだね。ちょっと捻くれてるから・・・」



不二の捻くれてるって言葉が引っかかったけど・・・

聞いてもたぶん上手く誤魔化されるんだろうなぁ

ずっと気にはなってるんだ・・・

不二には好きな奴がいないのかなって・・・

いつも俺の話ばかり聞いて貰っていて、不二の悩み事や恋愛話なんて殆んど聞いた事が無い。

不二はこのチョコの山を見てもわかるぐらいモテんのに、誰とも付き合おうとしない。

そういえば、去年も告白された子全員その場で断ったって言ってたな・・・

今年も断ってんのかな?

気に入った子がいないのか?

それともやっぱり、密かに思い続けている奴でもいるのかな?

う〜〜考えてたら、ますます気になってきた。

やっぱり思い切って聞いてみようか?

イヤ・・・駄目だ。俺の時も、俺が言うまで、不二は黙って見届けてくれてたんだ。

俺だって、不二が俺に言いたいと思うまでは、聞いちゃ駄目なんだ。



「ところで、英二はこれからどうするの?」

「へ?」



不二の事をアレコレ考えてたら、いつの間にかいつもの調子に戻った不二が、俺の持ってきた紙袋を指差しながら聞いてくる。



「朝一番は無理だったんでしょ?この先の作戦はどうするの?」



不二に言われて思い出した。

不二の事も気になるけど、今日はそれがメインなんだ!!



「そうだな〜まず休み時間になったら大石のトコに行って・・・それから勝負だ!」



俺は握り拳を作って見せた。

不二はフフフッ・・と楽しそうに笑っている。


そうだよ。とにかく大石を捕まえなきゃ、じゃなきゃ何も始まらない。

朝一番に渡すのは無理だったけど・・・

放課後は俺の為にあけて貰うんだ。





不二は誰を想うのか・・・いつかそれがわかる話も書く予定☆だけど・・・予定は未定で・・・☆


半分まで来ました。(残り3ページ)